ピアノアートを訪れると、出荷間近のスタンウェイがチューニングを受けているところでした。今回は新井さんの自信作3台を紹介しましょう。
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フィッシャー(FISHER)
130年前のアメリカBaldwin製のフィッシャーピアノです。
弦やチューニングピン、フェルト、スキン、クロスなど総替え、塗装も塗り直されています。外観からだけ見ると新品のピアノのようです。
内部を見ると交換した部品と従来のパーツとの差が一目瞭然です。鍵盤は白鍵黒鍵とも張り替えです。ペダル箱も改良されています。
このグランドピアノの最大の特徴「綺麗な音」を自身の耳で聞いてみませんか。国産のピアノには無い音が実感できます。
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タローネ(Tallone)
全弦交換・調整済み
創業者タローネは、ドイツの名門ブリュートナー社へ修行を行いますが、今まで聴いたことのない音色を求めて、イタリアに戻り、タローネピアノの製造を始めます。
やがて、タローネは、世界的ピアニストとなるミケランジェリの出会います。ミケランジェリの演奏にタローネが感銘を受け、彼の演奏会は全て自分が調律すると申し出た事に始まります。この出会いはタローネのピアノ製作にも大きく影響し、世界を回る専属調律師タローネは共に世界のトップに立つことになりました。
やがて、ヤマハが「世界一のコンサートグランドの開発」を手がけたとき、当時世界一のピアノ技術者タローネが招かれ、ヤマハに協力する事になったのは有名です。
タローネのピアノは総生産台数が約500台程しかなく、しかもタローネは値段はあまり気にせず、気に入った人にしかピアノを販売なかったといわれています。1982年タローネが亡くなると工場も閉鎖してしまいました。しかしながら、そのピアノが余りにすばらしく、所有者がほとんど手放さないために一般市場に出回ることはほとんどなく、“幻の逸品”として知られています。
ここのタローネも過去には色々なことがあり、外装の補修でイタリアまで帰ってきたことも。ピアノアートに入ってきた今は内部の入れ替え、調整も終えて新しい主人を待っています。新井さんはプロがこの弦を見れば仕事が全部判ると言います。素人は外観と音しか興味もたないとのことですが、是非工房で外観も内部の弦とハンマーそして音を確認してみてください。
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ベルトン(BELTON)
今では製造していないどころか、製作メーカーの富士楽器も存在していません。調律師さんでも滅多にお目にかからないようになってしまいました。このピアノも軽く50年は経ってます。60年代初め頃、ピアノを買うならベルトンがいいといわれました。そのころはまだヤマハのピアノは金属的で無機質な音とも。
このアップライト・ピアノは普通の調律や修理ではだめで最後にこの工房へ来ることができてついに大掛かりなオーバーホールが施されて生き返りました。鍵盤は象牙で、ハンマーはドイツ製の高級品です。白盤は少し黄ばんで来ていますが、充分柔らかな白です。ピアノは年老いません。クリアな伸びのある音色が特徴です。